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Medical Treatment

脳腫瘍下垂体腺腫の治療

下垂体腺腫の治療について

下垂体腺腫に対しては顕微鏡下経蝶形骨洞手術(いわゆるHardy手術)が一般的でしたが、当時日本で紹介され始めていた内視鏡手術の利点に着目し、2001年から熊本大学に導入しました。耳鼻咽喉科教室と共同で鼻鏡を使わずに両側鼻腔を利用する到達法を開発し発表すると、その操作性の良さはすぐに学会で認識され多くのシンポジウムで発表する機会を得ました。以来800例を超える手術症例を重ねてまいりました。これは全国でも有数の経験症例数とされています。

イラスト内視鏡下経鼻的経蝶形骨洞手術は従来のHardy手術に比べて小さな切開でより広い視野を得ることができ、低侵襲でかつ摘出率の向上が得られています。たとえば先端巨大症やプロラクチン産生腫瘍などホルモン産生腫瘍は治癒率が明らかに向上しましたし、視機能障害を伴う大きな腺腫や側方に伸展した腫瘍でも十分な摘出が可能で、95%以上の視機能改善率を認めています。術後合併症である内分泌機能障害も減少しました。

より安全で治癒率向上のために

自身の研究として、より安全に腫瘍を摘出し合併症を軽減するための工夫を発表しました(Yano S. et al., Surg Neurol., 2007, Yano S. et al., Neurol Med Chir 2009)。また、機能性下垂体腺腫に対する術中迅速ホルモン測定の方法を開発し、迅速病理診断と合わせて摘出範囲を決定することで手術による治癒率が向上することを報告しました(Yano S. et al., World Neurosurg., 2017)。

最近では下垂体腺腫にとどまらず、より広範囲に進展した頭蓋底腫瘍病変に対して、内視鏡を用いた新たな摘出方法(内視鏡単独拡大経蝶形骨洞法)を開発しました(Yano S. et al., Surg Neurol Int., 2014, 2015)。開頭手術では非常に難易度の高い髄膜腫や頭蓋咽頭腫のような頭蓋底腫瘍に対しても内視鏡下で低侵襲に摘出でき、かつ合併症が少ないことを報告しております(Yano S. et al., World Neurosurg., 2017)。このような手術方法の工夫による手術成績の向上に対して、第4回アクロメガリーフォーラム奨励賞(2008年)と平成23年度熊本医学会奨励賞(2012年)を頂いております。

鞍結節部髄膜腫に対する内視鏡下経鼻的頭蓋底手術の様子

術前MRIの画像術前MRI
術後MRIの画像術後MRI
内視鏡下での頭蓋底開放内視鏡下での頭蓋底開放
腫瘍摘出後腫瘍摘出後

下垂体腺腫と診断された患者さんへ

下垂体腫瘍に苦しむ患者さんを一人でも多く治療したいと思っています。外科治療が必要な方には極力術後の負担が少なくなるような方法を研究し実践していきたいと考えています。
また下垂体ホルモンの分泌異常については、内分泌専門医としての立場から入院中や外来診察の中で他機関の専門医と連携を取りながら十分な検査を行いながら的確な治療を行う所存です。

治療にあたってのモットー

受診していただいた患者さんの不安をとりのぞき、一緒に病気と闘う気持ちを持つようにしています。疾患により治療法も異なりますので、まずご自身の病気のことを十分に知っていただくようにお話します。手術に至るまで十分な面接、話し合いを行います。そのための時間は惜しみません。
治療に際しては、正常機能、残存機能を損傷しないようにして、最大限の摘出を行うことを第1に考えています。手術ですのでリスクはどうしてもありますが、これまでの経験と文献的な報告を総合して説明を行い、納得頂いたうえで合併症のない治療を目指しています。

技術的には最新鋭の機器を使用して、かつ自身でも常に新しい工夫を考えながらより安全で確実な手術を行うようにしています。

下垂体腺腫の術前・術後管理

下垂体疾患におきましては、内分泌学的機能評価が必要ですが、内分泌専門医資格を有していますので当院でさまざまな負荷試験と評価を行うことが可能です。また他大学の内分泌専門医師との連携をとりながら治療に当たります。
術後の耳鼻科的な検査・治療はお住まいの近くの耳鼻科医と連携して行っています。
入院中の緊急の耳鼻科的処置が必要になることはまずありませんが、近くの耳鼻科の先生の協力もいただけるのでご安心ください。

間脳下垂体治療センターについて

福岡脳神経外科病院では全国にもまだあまり普及していない最新の4K内視鏡システムと頭部を固定しなくても正確な位置把握が可能な磁場式ナビゲーションシステムが整備されています。術中の成長ホルモンやプロラクチンの迅速測定も問題なく行うことができます。

最新の手術方法として鼻腔内の切開法を小さくし、両側篩骨胞開放による鼻粘膜への侵襲を少なくする方法を当院で開発し日本間脳下垂体腫瘍学会(2019.2.22 大阪)で発表しました。
術後の鼻出血、鼻閉感が従来法よりも改善し、術後4日目で退院することも可能になりました。
最新鋭の手術機器・支援装置を配備しています
当院に配備している機器は
  • ・神経内視鏡装置 4K(最新型)
  • ・神経内視鏡ビデオスコープ
  • ・立体視できる4Kモニター ORBEYE
手術室の写真
手術支援装置として

頭部を固定しないでも安定した画像が得られる磁場式ナビゲーションシステム
視機能、聴覚、顔面神経、嚥下など各種神経モニタリング(手術中に行います)
術中CT撮影 (脳腫瘍や脳出血の残存部分を評価できます)
術中脳血管撮影
など、大学病院と同等の設備を有していますので、安全で高度な手術が可能です。

また当院の特長として脳血管内手術専門医が6人(2020年4月現在)いますので、脳血管障害の合併症や術前の脳血管の評価、腫瘍栄養血管の塞栓など臨機応変にかつ迅速に対応できます。
大学病院と異なり脳神経外科単科の病院ですので、脳神経に特化した高度な治療を行うことが可能であり、日程や時間などの融通がききやすい点が特長です。

800例を超える内視鏡下経鼻的手術の経験(2001.12より2019.12までの経験症例)

矢野 茂敏
矢野 茂敏

S38.1.29 大分県生まれ
熊本大学医学部脳神経外科准教授を経て
2018年9月より福岡脳神経外科病院に赴任

学会発表 毎年 日本脳神経外科学会総会、日本神経内視鏡学会、日本間脳下垂体腫瘍学会、日本脳腫瘍の外科学会などでシンポジウム、口演を定期的に行っています。 資格 日本脳神経外科学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医、日本間脳下垂体腫瘍学会理事、日本脳卒中学会専門医、内分泌代謝科(脳神経外科)専門医、がん治療認定医

1988年熊本大学医学部卒業後、同年脳神経外科に入局。熊本地域医療センター、済生会熊本病院、大分県立病院で主に脳血管障害の手術を経験し、1999年から熊本大学医学部附属病院で助教として勤務。2008年から講師、2011年から2018年8月まで准教授をしておりました。
これまでに脳血管障害、小児脳神経外科、頭部外傷を含む1500例の脳外科疾患手術を行っておりますが、熊本大学病院では脳腫瘍部門を担当していました。
熊本大学脳神経外科は年間400例の手術のうち約半数で脳腫瘍手術を行っておりますが、これは全国でも5位以内に入る治療実績であり、私はそのうち約6割を占める髄膜腫、下垂体腺腫、聴神経腫瘍などの手術を行ってきました。なかでも内視鏡を用いた脳腫瘍摘出手術を専門としております。

・内視鏡下経鼻的手術の内訳

診断名 手術症例数
~2018年 2019年(1月~12月)
下垂体腺腫 603 24
非機能性 396 19
成長ホルモン分泌性 102 1
プロラクチン分泌性 70 1
ACTH分泌性 30 3
FSH分泌性 4
TSH分泌性 1
ラトケ嚢胞 58 13
髄膜腫 51 3
頭蓋咽頭腫 39 2
脊索腫 17 2
粘液嚢胞 5 1
線維性骨異形成症 5
下垂体膿瘍 3
下垂体炎 2
転移性下垂体腫瘍 3
その他希少腫瘍 17 2
髄液漏修復術 16 1
鼻出血止血術 5
腫瘍内血腫除去術 2
Total 826 48
内視鏡下拡大蝶形骨洞手術 172 8

・これまでに手術を行った施設

診断名 手術症例数
~2018年 2019年(1月~12月)
熊本大学 572
福岡脳神経外科病院 12 43
熊本赤十字病院 18
天草地域医療センター 9
熊本市民病院 9
熊本労災病院 8
人吉総合病院 4
熊本総合病院 2
保利病院 1
済生会熊本病院 1
 
大分県立病院 15
新別府病院 7
宮崎県立延岡病院 12
大牟田天領病院 2
出水市立病院 1
 
福岡大学筑紫病院 46
金沢大学 14
宮崎大学 11
久留米大 1
産業医大 1
 
北斗病院 46 1
中東遠医療センター 21 4
袋井市民病院 2
大手前病院 5
浜松労災病院 4
長崎北徳州会 1
横須賀市立うわまち病院 1
Total 826 48
2019.12.31現在

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